2006年 05月 14日
山に行くようになってからもう20年を越えるベテランだが、山では時々不可思議なことが起こるという。
山登りを始めて間もない頃、無謀にも夜、一人で山に入った。
樹木の間を抜け、坂を歩き、ちゃんと道を間違えずに上っていたつもりが、気付けば見知らぬ場所に入ってしまった。
何度か入った事のある山だったが、以前入った時はちゃんと動いたはずの磁石がなぜか動かない。霧も出てきて歩けなくなり、獣道とも呼べぬ道で休憩を取った。
「おい!」
誰かの声が聞こえた。
振り向くと、気付かぬうちに髭もじゃのホームレスの様な風貌の老人が立っている。
老人は言う。
「こんな所で何をしていた?」
山を登っていたのだが迷ってしまったと答えると、老人がAさんの頭に手を置いた。
急に体の力が抜け、Aさんはしゃがみ込む。なぜか立てなくなってしまった。
気を失っていたらしい。
気がつくとAさんは自宅の布団の中にいた。
なぜここにいるのか全く覚えていない。
水を飲もうと起き上がり、ベッドに置いてある時計をなにげなく見て驚いた。
山へ出発する当日の朝だった。
夢だったかと思ったが、老人に手を置かれた箇所が赤く腫れ上がっていた。
Aさんはその日の山登りを急きょ中止した。
そのあと頭は一か月に渡って腫れていたという。
by tominaga103175
| 2006-05-14 00:53
| 怪談