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山登りが好きなAさんの話。

山に行くようになってからもう20年を越えるベテランだが、山では時々不可思議なことが起こるという。

山登りを始めて間もない頃、無謀にも夜、一人で山に入った。
樹木の間を抜け、坂を歩き、ちゃんと道を間違えずに上っていたつもりが、気付けば見知らぬ場所に入ってしまった。
何度か入った事のある山だったが、以前入った時はちゃんと動いたはずの磁石がなぜか動かない。霧も出てきて歩けなくなり、獣道とも呼べぬ道で休憩を取った。
「おい!」
誰かの声が聞こえた。
振り向くと、気付かぬうちに髭もじゃのホームレスの様な風貌の老人が立っている。
老人は言う。
「こんな所で何をしていた?」
山を登っていたのだが迷ってしまったと答えると、老人がAさんの頭に手を置いた。
急に体の力が抜け、Aさんはしゃがみ込む。なぜか立てなくなってしまった。

気を失っていたらしい。

気がつくとAさんは自宅の布団の中にいた。

なぜここにいるのか全く覚えていない。

水を飲もうと起き上がり、ベッドに置いてある時計をなにげなく見て驚いた。
山へ出発する当日の朝だった。

夢だったかと思ったが、老人に手を置かれた箇所が赤く腫れ上がっていた。

Aさんはその日の山登りを急きょ中止した。

そのあと頭は一か月に渡って腫れていたという。
by tominaga103175 | 2006-05-14 00:53 | 怪談

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